先輩を可愛い、かわいいと言っていいのは僕だけです
 きっと本宮君的には植物へ「大きくなれよ、キレイな花を咲かせてね」と声を掛ける要領でわたしにも可愛いと言うんだろう。

 わたしは至って普通の何処にでも居る女子高生と自覚しており、勘違いはしない。

「ヒマワリ、早く咲かないかな」

「やっぱり自分と同じ名前のが好きですか?」

「それもあるけど本宮君と育ててきたから。園芸部ってわたし以来、部員は入ってこなくて。ずっと後輩が欲しかったの!」

 両親が向日葵と名付けた理由は夏生まれ、かつ弾ける笑顔の女の子になれるようにとの願いが込められている。
 奇しくも、わたしの周りに本宮君や涼介といった華のある人物がいるので、自分の笑顔が元気よく弾けていても霞んでしまう気がしないでもない。
 それでも向日葵という名は気に入っていた。

「後輩、ですか?」

「うん、可愛い後輩! 本宮君が入部してくれて嬉しいな」

「……じゃあ、先輩は可愛い先輩ですね。僕が入部したくらいでそんなに喜ぶなんて、かわいいです」

 可愛い、かわいいと本宮君は繰り返す。悪気は感じられず、お世辞にしては滑らかで。
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