お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
バイオレットにしてみれば、メリンは自分以上に考えなしだ。フィオンが好きだと言い始めたら、毎日フィオンのことばかり。自分が人間の姿になったとしても、フィオンがメリンのことを好いているかなんてわからないのに行くと言う。キスをしてもらえばずっと人間の姿でいられると言われれば、簡単にキスしてもらえると変に自信満々だった。
だから今回も、フィオンの呪いを解くという自分の希望を叶えるために、メリンは月の妖精に命を差し出すだろう事は想像に難くなかった。
そうなると、バイオレットはもういてもたってもいられなかった。
メリンに会えないのでは説得もできない。
代わりにバイオレットの命のかけらを渡すかとも思ったが、バイオレットにしてみればフィオンはメリンの好きな人とはいえ、いつも助ける人間の中のひとりにすぎない。そんな人間のために自分の命をあげるのもおかしな話だ。
それならばフィオン本人が月の妖精の元へ行き、自ら呪いを解けばいいのではないかと閃いたのだった。
満月までもう時間がない。
全てに急いていたのはこのためだった。