お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
小さなメリンの唇で呪いが解けるのだろうかとメリンは少し不安だったが、フィオンに堂々とキスができる口実になったと気合を入れる。以前は人間の姿だったから緊張してしまったし体が固まってしまったが、今は小さい妖精の姿だ。きっとできるはず。
フィオンはというと、人前でキスするなどと心の中では羞恥でいっぱいだったが、呪いを解くためならばやるしかないと心を落ち着かせる。
さぁどうぞ、とでも言いたげに月の妖精は両手を前に差し出す。
なぜ好きな人とのキスをお膳立てしてもらわなければならないのか、とメリンは少し悲しくなったが、フィオンの呪いを解くためである。自分の残りの命ではなくメリン自身の力で解呪できる以上の喜びはなかった。
いざキスして良いとなるとまた怖気付いてしまうメリンはフィオンの顔の前で「じゃぁ失礼するね」とぎこちなく微笑む。フィオンは息を止めているかのような顔で真っ赤になっていた。
メリンも負けじと顔を赤くするが、お姉さんの自分が頑張らなければと、えいっとフィオンの唇に自身の小さな唇を触れさせた。
フィオンは目を瞬かせ、あの時感じたピリピリした感覚が全身を駆け抜けていくのを感じていた。あれは、メリンの呪いを解く力のものだったのか。
一瞬でフィオンの顔色が良くなる。本当に息を止めていただけだったのでは、とメリンは心配になるが、目の下にうっすらとできていた青いクマも消えていた。