お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

「いやぁ、良かったね、めでたしめでたし」
 月の妖精はひとりで拍手をしている。フィオンは右肩をぐるぐるまわし、痛みがないことを確認した。それから寝巻きから右腕だけ抜き、あざが無いことを確認する。
 月の妖精がフィオンの右肩に触れる。月の妖精が触れてもピリピリとはしない。
 うん、と月の妖精は頷いた。
「呪いはすっかり消えたよ」
「ありがとうございます」
 フィオンは恐る恐るお礼を言った。あんなに苦しんだ右腕が、月の妖精に言われるがままメリンとキスしただけで事が上手くいってしまい戸惑っている。
「さぁ呪いも解けたし、ぼくは可愛いエキザカムの妖精が残りの寿命で幸せになるところを見れたし、みんな幸せになってよかったね。これぞまさにハッピーエンドだね。長らく生きてきたけれど、こんな幸せな解呪なんて初めてだよ」
 月の妖精も感動に浸っている様子だった。そんな心もあるんだなぁととバイオレットはしばし感動していたが、やはり余韻など感じるタイプではなかったようで「じゃぁもう時間だから」と追い出そうとする。
「でもっ! 私をもう一度人間の姿にしてもらいたいんです!」
 メリンが瞳に涙を溜めて必死に懇願した。メリンにはまだ解決していない事がある。
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