お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

 ここへ初めて人間の姿でやってきたときも、薄着は良くないと言われたのを思い出す。確かに、妖精の時よりも大きくなった胸が主張してくるものね。長い腕も足も、存在感が強い。もともと愛らしい私がこんなに魅力的になったら、フィオンだって困るわよね。肌触りも軽さも人間の服の比ではないから、私は好きなのだけれど。
 戻ってきたフィオンは私をまたぐるぐる巻きにする。
「足もそんなに出してはいけない」
 そんなことを言いながら。ローブは無事に私のつま先まで隠してくれている。
「でもフィオン。こんなにぐるぐる巻きにされたら、私あなたを抱きしめられないわ」
 そう言うと、フィオンはまた頬を赤らめた。先ほど抱きしめたいと言ったのは自分なのに。
 頬を赤くしながらフィオンはそっと私を抱きしめた。私は腕が自由にならないから、受け入れるだけで抱きしめ返す事ができない。ぎゅうっと抱きしめたいのに。
 けれど優しく抱きしめられたことで、今までの不安や緊張が全て溶けていったのがわかった。
 ふいに、涙が溢れてきてしまった。
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