お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

「はぁぁぁ」
 今日何度目かのため息だ。
「メリン。花の上でため息とはね。今日何度目なの?」
「数えてない」
 花弁の中に突っ伏すと、花粉が飛び散った。
「またあの人間のことを思い出しているの? 毎日飽きないね」
「仕方がないでしょ。好きなんだもの」
「好きはいいけど、ため息ばかりじゃ楽しくないじゃん」
「そうだけど。でも顔を思い浮かべるだけで、楽しくなるのよ」
「ため息ついてるけどね」
「だってぇ」
 私を揶揄いながら、顔についた花粉を拭き取ってくれる。
 メリンは私の名前。彼女はバイオレット。1番の仲良しだ。生まれた時から一緒にいる。

< 2 / 121 >

この作品をシェア

pagetop