お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
「決めた。命のかけらにしよう」
「命のかけらってなんですか」
おそるおそる聞いてみる。月の妖精は嬉しそうに棚を指差した。
「あれだよ。綺麗でしょ。ぼく、命のかけらを集めるのが好きなんだよね」
棚には私たちが入るサイズの小瓶に入った宝石がひとつひとつ並べられていた。
確かにそれはとても綺麗だったけれど、『命のかけら』と聞くと、恐ろしいものに感じてしまう。
「寿命の半分を結晶化したものだよ。妖精それぞれの色や形が違って最高だよねぇ。君の命のかけらはどんな色で、どんな形なんだろう」
恍惚とした表情で、その美しい顔が小瓶に向けられている。
バイオレットが私の手を握って立ち上がった。
「やめよう! そんなことしたらあんた死んじゃうよ。そこまでして人間にならなくったって、今までみたいに見にいけばいいじゃん」
いつも強気のバイオレットの瞳に、うっすらと涙が浮かんでいた。
私はバイオレットの気持ちも考えずに今まで突っ走ってきてしまったのだと気付かされる。
けれど、確かに私は故郷を発った時に、フィオンのボタン以外は何を失ってもいいと決意したのだ。この友だちも失うかもしれないとは思いもせずに。