お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
それにしても、人間の姿になったら羽がなくなるなんてことはすっかり失念していた。確かに人間には羽はないものね。他にもわかっていないことがたくさんありそう。
「バイオレットについて来てもらえればとっても心強いけど、でも申し訳ないよ」
「乗りかかった船って言うじゃん。あたしの場合はがっつり乗り込んでるけど。ここまで来たんだし、人間界まで着いていくよ。本当にあんたが心配だし。それに、あたしはエキザカムの妖精なんだからさ」
バイオレットはそういって微笑んだ。
私も微笑み返す。ありがたいことこの上ない。
「話がまとまったなら、道を作るよ。そのドアを通り抜けたらもう人間界。君の体も人間の体になっているからね。魔法も使えない。覚悟はいいかい」
月の妖精が背中側のドアを指差した。
「えっ、もっと色々聞いておきたいんですけど!」
もう少し時間があるのかと思っていたので焦ってしまう。