お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
ドアの光の中へ一歩踏み出す。光のトンネルが続くようだったけれど、次の一歩で体が大きくなったのがわかった。もう一歩足を踏み出すと、裸足の足は木の板を踏みしめていた。
眩しい光が消えると、そこはいつも遊びに来ていたフィオンの寝室だった。
手には騎士のボタンを握りしめている。体にはいつもの紫と黄色のワンピース。ただ妖精の時よりも足元が遠いし腕も足も長い。胸の膨らみは大きくなっているし、頭も体も重たい。
確かに人間の体になっている。
「わぁ!」
嬉しくてぴょんと飛び上がると、ドスンと床が鳴った。あれ? 飛べないし、体が重たすぎる。背中に目をやると、キラキラしていた透明な羽はなくなっている。羽はなくなるんだった。羽がないから体が重いのか、大きくなったから体が重いのか。
バイオレットに見てほしくて、辺りをキョロキョロと見回す。けれど、バイオレットらしき妖精の姿が見つけられない。
喜びも束の間、体がどんどん重たくなって、立っていられなくなってしまった。起き上がっているのも辛くなり、ついには横になる。
私の体、どうしちゃったんだろう。
バイオレットを探したいし、フィオンの寝室ならば彼もいるはず。確認したいのに頭があがらない。瞼も落ちてきてしまった。
命のかけらを渡した反動なのか、それとも体の変化についていけないのか。
突然やってきた睡魔に抗えず、私はそのまま意識を手放した。