お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
目が覚めると、見慣れたフィオンの寝室ではなく別の部屋のベッドの中だった。
同じくらいの――といっても私はもう100年くらい生きてるけど姿かたちが同じくらいの、ということ――女の子が私が目覚めたことに気づき、「気がつきました!」と慌てて部屋を出て行った。
手にはしっかりとボタンを握りしめている。気持ちの良い布団から少しだけ起き上がる。体はそこまで怠くも重たくもなくなっていた。
辺りを見回すと、窓際の日陰にぼんやりと小さな光が見えた。
「バイオレット!」
声をかけると光が私のもとへ飛んでくる。やはりバイオレットだった。
「大丈夫? この屋敷についてから、メリンがはしゃいでると思ったら急に倒れこんでさ。あたしは下敷きを免れたけど何にもできなくて。でもすぐに寝息が聞こえたから、寝たんだなって安心したところにあの騎士たちがやってきてメリンをこの部屋に運んだというわけ。もう朝になっちゃったよ」
「ごめんね。バイオレットに大きくなった体のことを話したかったんだけど。急になんだかすごく体が重たくて眠たくなっちゃって。でもここはフィオンの屋敷で間違いないということね。よかった」