お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

 私を助けてくれた騎士の出立ちは、まるでおばあちゃんから聞いた人間界のお伽話の王子様のようだった。
 薄気味悪い暗い森の中で、彼だけが輝いて見えたのだ。

 妖精界にだってかっこいい王子様のお話はあるけれど、人間界の王子様ってどうしてそんなに魅力的なのかしらね。

 助かった、と安心した私は全身の力が抜けて、その場にへたり込んだ。
 オオカミは人間にも認識されることが多いけれど、私を認識する人間は稀だ。だから今回も私は認識されないだろうと思った。
 鼻息荒いオオカミが駆けてくれば自分が襲われると判断し、剣を振り下ろしたのだろうと。
 そしたらへたり込む私に、騎士は馬から降りて膝をつき、手を差し伸べたのだった。
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