お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

 食事が部屋に運ばれてきた。蜜だけでは足りなくてお腹が空いていたのでありがたい。
 スープとサラダだけ食べたらお腹いっぱいになってしまったので、残りは起きてから食べようと思い布団に入る。
 布団に入るとクタクタの体を伸ばしたら、すぐに瞼が開かなくなってしまった。
 目が覚めたらもう朝だった。妖精の姿の時よりもよく寝てしまっている。
 体を動かすのはいつものことだったし、掃除は初めてだったけれどここまで長く寝ることもそうそうない。人間の体って不便なんだなと思いながらベッドから這い出す。
 あんなに寝たのに体が重い。人間の姿になってすぐに倒れてしまった時のように重い。
 朝食は時間が合えばフィオンと食べていいとの事だったし、頑張って食堂へ向かいたいのに。フィオンのそばにいたくて来たのに。体がままならない。悔しい。
 ベッドから出たものの、ベッドへともたれかかったまま窓の外を眺める。眩しい朝日にため息が出てしまった。
 枕元ではバイオレットがまだ寝ている。妖精は夜も更けてから眠ることが多いから、朝はお寝坊さんが多い。バイオレットも夜の間に外で遊んできたのかな。
 朝食は諦めなければならないかと思っていた時、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「はい」と答えると、フィオンが顔を出す。
「おはよう」
 フィオンから朝の挨拶をされる日が来るなんて。
「お、おはよう」
 私は嬉しさのあまり体のだるさが吹き飛んだ。気がした。勢いで立ち上がったのに、またベッドへともたれかかっている。
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