お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
ベッドで横になったらどうかと勧められたけれど、テーブルでご飯が食べたいと説得して椅子に座る。体が重たくても椅子には座れた。
すぐに私の分の朝食が運ばれてきた。
「フィオンはいいの?」
「あぁ、俺はもう済ませたんだ」
「そうだったの……。明日は食堂に行けるようにする」
しょんぼりしながらも、運ばれてきた朝食にペコペコのお腹が反応する。
いただきますのお祈りを教えてもらい、フィオンにバターを塗ってもらったパンをかじる。
「妖精の一日はどんな風に過ごすんだ?」
少しお腹に入れると体が少し軽くなった気がした。単にお腹が空いていただけなのかしら。
「朝はお寝坊さんが多いかな。私も夜遅くまで遊んでしまうから、朝はゆっくり寝ていたわ。夜は光るトンボを追いかけるので忙しいのよ。すっごく美味しいの」
トンボの話をすると、出会った時のことを思い出しちゃうなと少し照れたら、フィオンが複雑そうな顔をしている。
「そうか、妖精たちはトンボが主食か」
「トンボばかりじゃないけどね。花の蜜が一番かな。あとは木の実。人間の食事ってすごいよね」
そこまで話して、人間はトンボは食べないのだろうと思い至る。
「もしかして、トンボが美味しいなんて言ってびっくりした?」
フィオンの顔を覗き込むと、真面目な顔をされてしまった。
「正直に言えばびっくりしたが、君は妖精だからな。まだまだ面白い話が聞けると思うと楽しみだ。我が家の食事は妖精の口に合うだろうか」
「えぇ、とっても美味しい! すぐに元気になれると思う」
私たちのような小さな妖精はほとんど遊んで暮らしていること、旅をする妖精がいること、月の妖精のように大きな妖精がいることを話す。フィオンに妖精族の話をするのは初めてだった。出会った日はフィオンの騎士の話ばかりしてもらっていたから。