お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

「だから、月の光! 月の妖精が言ってたじゃん。月の光を浴びれば魔力が回復するって。メリンは今でかくなったんだからそれなりに魔力がないと元気でいられないんだよ。ご飯だけじゃ足りないはずだよ!」
 一人で納得しているバイオレットに、私は頭が回らないまま「月の光かぁ」と返事をする。けれど月が出ている時間、私はぐっすりと夢の中だ。起きていられる、もしくは起きられる自信が全くない。
「もう面倒だから、外で寝れば? 雨さえ降らなきゃ大丈夫だって」
 バイオレットが嬉しそうに言う。
 そうか、その手があったか。最初から外にいれば、夜中には嫌でも月の光を浴びることができる。
「それ最高」
 私はマリーがくれたネグリジェに着替えた。メイド服のまま寝てしわくちゃになっていたところをマリーに叱られ、着替えがないことを話すと「買いに行くまでこれを着て寝て!」とマリーのネグリジェをくれたのだった。
 ネグリジェとは寝る時に着る服なんだそうだ。人間は一日に何度着替えるのかしら。妖精は着替えなんてしないから不思議で仕方がない。
 それにしても、簡単に服をくれるマリーも相当優しい人間なのではないだろうか。
 この屋敷は優しい人間ばかりだ。フィオンが優しいからみんなも優しいのかな。
 ネグリジェは妖精の服と似ていて着心地が良い。さらさらとしていて、軽くて、飛ぶ時にも邪魔にならないと思う。今の私は飛べないけれど。
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