お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

 這うようにして窓際に行く。バルコニーは私が寝るには十分の広さだ。
 窓を開け放って、そのままバルコニーにごろんと横になった。
 手足を投げ出して仰向けになる。
 外で横になって空を見上げるなんていつぶりだろう。
 青空を見上げて、大きく深呼吸をした。
 これが、背中の下が草や土だったらもっと気持ちいいんだろうな。
 風を感じながらうとうとし始める。隣でバイオレットの「いい天気だなぁ」と言う声が聞こえた。
 なんだかほっとする。
 そのまま私は昨日とは違う気持ちで眠りについたのだった。

 近くで誰かの話し声が聞こえて目が覚めた。
「だからジャマしないでってば。今魔力の補給中なんだから」
「でもその子、こんなところで風邪ひくじゃろ」
「大丈夫だって。いつも外で寝てたんだからさ」
 どうやら声の主の一人はバイオレットのようだ。もう一人、低い声の主がいる。
 バイオレットなら大丈夫かと、意識を手放そうとすると、今度は髪の毛を引っ張られた。
「い、いたっ痛い!」
 しかも結構な強さだ。思わず起き上がる。
「起きた起きた」
 私が起き上がったことに、低い声のほうが喜んでいる。
「なんで引っ張るの? いったぁ……」
「もう、起こさなくてもいいじゃん」
 バイオレットが私の代わりに怒ってくれている。見ると、小人が私の髪を引っ張っていたようだ。
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