お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

 小人はしわくちゃの顔にかぎ鼻で、髭を蓄えている屋敷妖精だ。
「でもなぁ、外で寝るのはわしらでもせん」
「私を心配してくれたのはわかるけど、髪を引っ張るのはやめて」
 私がそう返すと、小人は「それが一番目が覚めるじゃろ」とか言っている。
「気持ちは嬉しいけど、私は月の光を浴びなきゃいけないから。ここで寝ていても見守ってね」
 小人は不思議そうにしている。
 その時、ひとつ離れた部屋の窓が開いて誰かが顔を出した。
「メリン?」
 私を呼ぶ声の主はフィオンだった。
「こんな時間に外から話し声が聞こえたからどうしたかと」
「騒がしかったかな。起こしちゃった? ごめんねフィオン」
 月明かりに照らされたフィオンの顔はいつもと少し雰囲気が違う気がしてドキドキする。フィオンの顔が見れて嬉しい私はついニマニマしてしまう。
 小人はサッと私の後ろに隠れてしまった。
 隠れてもどうせフィオンには見えないのにね。
「月の光を浴びていたの。そしたら屋敷妖精に髪を引っ張られて」
「屋敷妖精がいるのか」
 フィオンが驚いた顔をして私の周りをキョロキョロと見回す。
「私の後ろに隠れているわ。この屋敷にはたくさん妖精がいるよ。また教えてあげるね」
 すると小人がまた私の髪を引っ張る。
「わしらのことは放っといてくれ!」
 そう言って姿を消してしまった。
「悪いことしちゃったかな」
 横にいるバイオレットにそっと言うと、バイオレットは「まぁいいんじゃない」と笑ってくれた。
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