お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

「私あの小説大好きで。身分差の恋がこんな間近で見れると思わなかったから嬉しいなぁ。私は絶対にそんな無謀な事はしないけど。フィオン様も騎士団のお仕事で忙しいからって婚約者もいないし、今までも恋人とかいただろうけど、女の影を見たことがないんだよねー。だからメリンさんが来た時はびっくりしたんだよ! 朝ごはんも一緒に取るなんて使用人には無理なんだからね。びっくりな特別待遇すぎるよ。 頑張ってね!」
 拳を握りしめて私に頷くマリーに、私は「うん」と答えるしかなかった。
 それにしても気になる言葉が出てきて私は狼狽えていた。
 フィオンに婚約者がいるだとか、恋人がいるかもしれないなどと考えもせずにやってきてしまったのだ。
 マリーの話ではそういった存在はいないようだが、本人に確認しなければならないことだ。私は迷惑な押しかけ女房になって、ますますフィオンに嫌われてしまう。
 フィオンに好きと伝えるために人間の姿になりたかったけれど、キスをもらえばずっと人間の姿でいられると言われればこの先もフィオンと共にいたいと願ってしまったし、今もフィオンとずっと一緒に過ごしていきたいと思ってしまっている。
 一つ願いが叶ったら、さらに願いが増えていく。
 しかしこの願いは私だけの問題ではなく、フィオンの気持ち次第なのだ。
 私はただの居候なのだから。
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