お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

 フィオンからキスをもらったとして、フィオンが貴族の令嬢を妻に迎えるとなったら私はどうなるのか。このまま使用人としてこの屋敷に居続けるのか、妖精界へ戻って二度と人間界へ来ないか。
 そう考えると悲しくなった。
 フィオンが私以外と一緒になるだなんて、耐えられない。それならば最初から人間の姿になるのではなかった。
 こんな気持ちはここに来るまで考えもしなかった。
 フィオンが好き。
 フィオンのことをもっと知りたい。
 彼の顔を眺めていたい。
 彼の隣を歩きたい。
 できれば彼に触れて、私に触れてほしい。
 そんな一方通行の想いだけだった。
 実際にフィオンのそばに来たら、キスも簡単ではないし、フィオンは私のことを好きなようではなかった。
 けれど私のフィオンへの気持ちはどんどん大きくなるし、嫌われたくないし、大きい体はままならないし、どうにもならない気持ちだらけだ。
 大きい体のことは、仕方ないことだけれど。
 フィオンの恋人になって、フィオンと結婚して、私の残りの命がなくなるまでフィオンと一緒に過ごしたい。
 嫌われたくないのに、そんな勝手な願い。
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