お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

「しかし、本当に不思議だ。君は妖精か?」
 上から下まで、さらには背中の羽までじっくりと観察される。
 されるがままの私は、まじまじと見つめられて照れてしまった。
「お礼を言っていなかったわ。助けてくれてどうもありがとう。ここは妖精のテリトリーよ。あなたは妖精界に紛れ込んでしまったの。私が人間界に案内できたらいいのだけど」
 照れ隠しに少しツンケンしてしまった。
 なぜいつも通りに人間に優しくできないのだろう。
 変なところで口ごもってしまった私を見て、彼はボロボロの羽のせいだと思ったようだ。
「それでは飛ぶのも一苦労だろう。俺が運んで仲間のところに連れて行こう。君の仲間も俺を人間界に案内してくれるか?」
 そう言うと私を手に乗せたまま馬に乗った。
 羽のせいというよりは、私も道に迷ってしまったからなんだけど。どうしよう。
 なんとなく道に迷ったことが言いづらく、「そうね、お願いするわ」と答えてしまった。
 でもこの人ならこの森は抜けられるかもしれない。さきほど感じた私のカンを信じてみよう。
 とにかくここから離れるべきだ。
 馬は特に私を警戒するでもなく受け入れてくれているようだった。
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