お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
マリーのクローゼットを見せてもらうとメイド服の他にも花柄のワンピースや可愛い色の服が何着か入っていた。
「私もたくさんはないけれど、これはお気に入りだからメリンさんに似合うと思って」
そう言って出した1着は、クリーム色の綺麗なワンピースだった。
「お気に入りなら汚したらいけないし、こっちがいいな」
私の元々着ていた服と同じ色のワンピースを選ぶ。
このワンピースなら首元までしっかりボタンが付いているし、フィオンも薄着だとは言わないだろう。
「お化粧もヘアセットも明日は気合いを入れないとね!」
マリーが楽しそうにしている。
「お化粧……ってした方がいいの?」
お化粧などしたこともないし、道具もない。ヘアセットといってもヘアアクセサリーどころか髪留めすら持っていないのである。好きな人の元へ来るのに、私は騎士のボタンと身一つで来てしまったことに今頃後悔をしていた。
「私、本当に何も持っていないの……」
こんなことで落ち込んでいては先に進めないだろうけれど、これは恋する乙女としては失格なのではないだろうか。
そんな私にマリーは慌てて「メリンさんは肌も綺麗だからお化粧はしなくても大丈夫じゃないかな! 気になるなら軽くしてあげるから元気出して!」とフォローしてくれた。
そう、妖精の私は肌荒れに悩んだことなどなかったのだ。どれだけ体が重たかろうが、肌のきめ細やかさは失われなかった。ありがたいことである。
マリーのおかげで少し元気になった私は、デートに向けて早めに休むことにした。もちろん、バルコニーで。