お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
「初めて会った時にすぐ気がついたわ。この人間はとても心が強いって。きっと私、そこに惹かれたのだと思う。それにとっても優しいし」
マリーにもらった紐を通した騎士のボタンを服の上からそっと触れる。いつでも身につけていられるようにしたのだった。
「あなたの名を聞いて、ボタンをもらって、ひとときも忘れたことはなかった。私、フィオンに名前は簡単に教えてはダメって言ったのに自分がフィオンに囚われている。もうフィオンのそば以外どこにも行くつもりはないの。だから、いつでもキスしてくれていいんだからね」
フィオンは何かを我慢しているように眉を顰めていた。キスをしてくれるかどうかの返事を聞く前に今日の目的地に辿り着いてしまう。
「とりあえず君の服を買う方が優先だな」
フィオンは話を逸らす。絶対に逸らす。負けないんだから。
ちょっと眉が寄ってしまったけれど、お店の中を見ると私はすぐに笑顔になってしまった。