お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
薄暗くて天井の低い通路を少し行くと、「ここじゃよ」と小人が光が漏れている隙間を教えてくれた。
「ありがとう! ビスケットは明日の夜バルコニーに置いておくからね」
手を振って教えてもらった隙間に突っ込んでいくと、急に視界が広がりフィオンの寝室に出た。
体が小さいと気にならない隙間も、体が大きいとヘンな感じがする。
枕元までそっと歩いて行くと、なにかうなされているような声がする。
フィオンを覗き込むと、苦しそうな顔をして何か喋っていた。何を言っているのかまでは聞き取れなかったけれど。
これは起こしてあげた方が親切かしら。
枕元に佇み少し悩む。悩みながら顔を眺める。いつも眺めていた寝顔がそこにあった。
顔を眺めている暇などなかったのだった。何をしに来たかって、私はキスをしに来たのだから。
そっと顔に近づく。フィオンの顔がすぐそばにある。私の顔も大きくなったから、距離の間隔がなんだか不思議な感じ。ドキドキする。
早くキスしなくちゃいけない。なのに最後の少しの距離が縮まらない。そこから私の体がどうにもこうにも動かなくなってしまった。あと少しでフィオンの唇なのに、なぜ私の体は動かないのだろう。
少し離れると息を止めていた事に気がついた。
もしかして私、フィオンにキスする事に緊張しているのだろうか。あんなに簡単な事だと思っていたのに?
出直した方がいいだろうか。
それよりもうなされているフィオンを起こした方がいいだろうか。
額の汗を見つけた私は起こしてあげようと決めた。
フィオンの肩を触るために手を伸ばしたところで手を掴まれた。