お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
こんなにも酷い呪いを、服の上からとはいえ何故気が付かなかったのか。
「妖精界から戻ってきてから数日経ったら出てきたんだ。なんだかわからなくていろんなところに相談をした。医者にも診てもらったし、教会へも行った。隣国の術者や魔女と呼ばれる者にも聞いてみたが治る気配がない。肩を動かすのに痛みを伴うから騎士の仕事を休ませてもらって、こうして屋敷で仕事をしているというわけだ」
「どうして今まで平気な顔をしていたの」
「君に知られると、自分のせいだと言いそうだし、心配するだろうと思って」
「するわよ! 自分の好きな人が辛い思いをしていたら私も辛いわ!」
思わず声を荒げてしまった。けれど言いたいことは本当はこんなことではない。
確かに人間界へ戻って少ししてから出たということは、妖精界で私を助けた時に剣を振り下ろしたオオカミの呪いである可能性が高い。
オオカミは、フィオンに切られた傷が治らずに死んでしまったのだろう。死ぬ時に、フィオンのことを呪いながら死んでいったのだろうと想像する。
「確かに私のせいだと思う。だけど大丈夫よ。私がなんとかする」
解呪方法なんてわからない。本能で呪いとわかるだけで、今まで呪いを見たことはないのだ。けれど呪いを甘く見てはいけないと教わってきた。このまま放っておけば、フィオンの命に関わるだろう。
そんなの、私が一番自分を許せなくなる。
大好きな人には、幸せに天寿を全うしてほしい。
だから一刻も早く妖精界へ戻って、呪いについて調べなくては。