お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

 目を開くとフィオンは真っ直ぐ私を見下ろしていた。少し悲しそうな瞳で。
「また、戻ってきてくれるのか」
 私、またここに来てもいいんだ。そう思えた言葉だった。
「そう言ってもらえて嬉しい。私はフィオンを諦めたくないよ。好きだから一緒にいたい。きっと戻ってくるわ」
 私は元気づけるように、力強く答える。だって私の方がずっとずっとお姉さんなんだから。
 にこっと笑いかけると、フィオンがそっと屈んできた。急にフィオンの顔との距離が近くなる。
 フィオンの手が私の髪に触れる。
 二人の間の空気が特別なものになってゆくのがわかった。
 私を見つめるフィオンの深い緑の瞳の中に私がいる。
 そう。私はずっとそこに閉じ込められていたのね。なんて幸せなことでしょう。
 泣きそうになりながらも、私はフィオンから目が離せない。
 これは、キスしてもらえるんだ。
 そう感じた途端に、また体が固まってしまった。
< 78 / 121 >

この作品をシェア

pagetop