お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
久しぶりに私たちの生まれた森に帰ってきた。念のため、長老に解呪方法を聞いてみようと思い立つ。
「ただいまぁ〜!」
バイオレットが元気に一族の住む場所へと入っていった。
「おかえり。突然出ていってしばらく帰って来なかったからもうとっくにいないものかと思ってた」
私たちの幼なじみが出迎えてくれた。みんな元気そうで良かった。
「人間界に遊びにいってたんだよ」
バイオレットが嬉しそうに返事をする。
私は挨拶もほどほどに、長老のいる大きな木を目指す。
「長老いますか」
木の上の方に開いている穴に声をかける。もともとフクロウの巣穴だったところだ。過ごしやすくてフクロウから譲ってもらったのだそうだ。一時期フクロウと一緒に住んでいたこともある。
「ほいほい」
のんびりとした声が帰ってきた。
「メリンか。なんじゃぃ」
長老が穴から顔を出した。
エキザカムの一族の中で一番長く生きているから長老なのだけれども、長老と呼ばれているのにその姿はちっともおばあちゃんではない。私たちよりもたくさん服を纏っているが、肌はシワひとつなく私たち若輩者と見た目はほとんど違いがない。けれど話し方が明らかに老人のそれなのだ。見た目とのギャップでいつも可愛いなと思っている。
私はもうそこまで長生きはできないのだと、久しぶりの長老の顔を見てふと思ってしまった。