お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
頭を振って変な思考を振り払い、質問する。
「長老は呪いの解き方を知っていますか?」
長老は問いの内容に驚いたのだろう。目を見開いて、穴から出てきてくれた。
「メリンが呪われたんかぃ」
「いいえ。私ではなくて、私の大切な人間が呪われていたんです。なんとかして助けてあげたくて」
「ほう、大切な人間とな。メリンも人間が大好きで嬉しいのぅ」
長老は目を細めた。まるで遠くを見つめるように。
しばらくしてから私を見て「わしの若い頃もな」と昔語りを始めた。私は昔の話は今聞きたいことじゃないんだけどなと思いながらも、質問の答えがあるかもしれないと話を聞く。
「ある人間が大好きで、しょっちゅう会いに行っていたやつがおってな。通い詰めるうちにその人間を連れて来るようになった。結局その人間はこの森で暮らすようになったが、人間の命はわしらよりもあっという間におわる。その人間もあっという間に亡くなってしもうた。その人間が残していったもんがメリンたちがよく読み聞かせてもらっておった絵本や物語なんじゃよ」
うんうんと頷きながら話す長老だが、この話は初耳なのでびっくりしてしまった。聞きたかったことではなかったけれど。
「もしかして、それって本人の意思で妖精界に人間が来るのは良いという決まりの元になった話ですか?」
「そうそう。そうじゃよ」