お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

「俺が後できちんとお礼をするからなんとか先に進めないだろうか……」
 メリンと話すのは疲れなかったが、妖精とコミュニケーションを取るのは実はとても疲れることなのだな、とフィオンは感じていた。メリンも猪突猛進なところがあったが、フィオンのことを考えてくれていたのだと今更ながらに実感してしまったのだった。
 フィオンがお礼を申し出たことで、きちんと家に帰れると安心した様子の小人は一番先頭に立ち歩き始めた。こちらも安堵した様子のバイオレットは、「ちょっと失礼」とフィオンの左肩に座り込んだ。小人の説得によほど体力を使ったようで、肩で息をしている。
 フィオンは小人を見失わないように後を追う。バイオレットの息が整うまで待つのが辛い。
 詳しい説明もお預けのまま、よく我慢しているなとフィオンは思わず自分を褒めた。
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