お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜
「月の妖精は満月の日にしか会えないんだ。だからメリンは次の満月にきっと月の妖精のところに行くはず。それであんたの呪いを解くようにお願いするつもりなんだ。自分の寿命と引き換えに」
そこまで話して、バイオレットは両手で顔を覆った。
「これ以上寿命を渡したら、メリンだって命がなくなっちゃうよ。メリンはあたしの一番なんだ。メリンにとってあたしは一番じゃなくても、あたしにとってはメリンだけなんだ。でもメリンを救えるのはあんたしかいないから。だからあんたをどうしても妖精界に連れてこなきゃって」
フィオンの元を去った次の日。エキザカムの一族の元からもメリンは去ってしまった。バイオレットがそれに気がついたのはメリンがさって半日経った頃だった。慌てて月の妖精の湖に向かったが、メリンはいなかった。トンボの妖精に聞いても来ていないと言う。
メリンは月の妖精の元へ行くと言っていた。ここで待っていればメリンは必ずやってくるだろうと、トンボの妖精たちの元でお世話になることにしたバイオレットだった。
満月までまだ時間はあると言っても、どこで道草を食っているのかわからない。メリンが心配で迎えに行こうとも考えたが、バイオレットが迷子になってしまっては元も子もない。
しかし2、3日してもメリンはやってこない。
呑気に待っていたバイオレットだったが、メリンはもしかしたら残りの寿命と引き換えにするつもりなのではないかという考えに至ったのだった。一度命のかけらを渡しているメリンは、寿命を半分失っている。寿命も底がつきそうだとまで言われていたのだ。