狂い咲きの蝶
すぐる

蝶が舞う

杏音がうずくまっている。
そうさせたのは僕。僕は、杏音を壊してしまった。

追いかけて、…近づいて、壊してしまった。

杏音の笑顔を守りたかっただけだったのに。
杏音の笑顔を消してしまった。

理由は僕にはわからない。わからないけど、聞いてはいけない気がする。

だって、ほら、あれからずっと杏音は元気がない。

周りは僕と杏音が付き合っていたことを知らないから、僕は何にも責められない。
ただ杏音が急変してしまったのだと、だれもが思っている。

杏音は親しい女の友達にも、何も言っていないようだった。
それを僕は心のどこかで“助かった”と思ってしまっている。

僕は最低だ。

きっとこのことがなくても、杏音の笑顔を守ることなんてできやしなかったんだ。

だけど、こうなった今でも僕は杏音が気がかりでならない。

あたりまえか。僕は遠い昔、彼女に救われたんだ。
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