狂い咲きの蝶
「おぅ、今帰りぃ?」

それでも、高校からいったん離れれば、僕は杏音ちゃんに話しかけまくった。

「…それにしてもすぐる君が南高に来た時はびっくりしたなぁ。でも、もともと勉強できてたよね。」

「いや、…」


本音は飲みこんでおいた。

“杏音ちゃんと一緒の学校に行きたかったから頑張った”
なんて言うのは恥ずかしかった。


「詩…まだ書いてる?」

ため息のようにかすれた小さな声で杏音ちゃんはそっと聞いてきた。

「…書いていない。勉強が忙しくて…」

「そっか…なんかさみしいね。」

杏音ちゃんの言葉はひとつひとつ心を突っついてくるようだった。


「…約束、覚えてる?」

今度は僕から聞いてみた。


「うん。いつか詩を教えてくれるって…」

「…じゃあ、…明日とかどう?」

「明日?部活の説明会のあとなら…」

「サッカー部のマネージャーだっけ?」

「なんで知ってるの?笑」

「あー噂で…。」

「うん!じゃあ明日!」


ここで丁度、僕が降りる駅だった。本当は杏音ちゃんが降りる2つ先の駅まで乗っていたかったけれど、やめておいた。


それより大きくこみあげてくるものがあった。


僕は、杏音ちゃんが好きだ…。


明日


告白しよう。
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