狂い咲きの蝶
何がいけなかったんだろう…。


熱海行きの電車の中で僕が居眠りをしたから?

それとも旅行中の会話がつまんなかったのかな…

そもそも僕なんか杏音に釣り合いあわないのか?



…いや、そうじゃない。
そんな理由じゃないことは明らかだ。


だけど、認めたくなかった。
現実から目をそらし続けたかった。

…杏音はあれからずっと何も話さない。
黙っている。

単純に怒っているならわかるが、顔がなんだか青白い。
それが少し気がかりだった。


「桜山さん、サッカー部のマネージャーやめたって。」

「そっかー。確かに5月入って元気なくしたもんな。」

「…そんな酷い扱いしなかったんだけどなぁ」

「がっかりー。俺サッカー部やめようっと。」


クラスの男子がわいわい話している会話を聞くと、杏音が誰にも何もいっていないことがよくわかった。

それを聞いてほっとした自分に幻滅した。

杏音との秘密の交際を黙っていた過去の自分に感謝している自分は最低だ。

だけど僕は逃げる。逃げる。逃げる。

結局僕は、小学校時代となんらかわっていないのだと思った。
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