狂い咲きの蝶
「あー私あの時まだ6歳だったから…あんま覚えてないよ。」

「そっかぁ。よかったぁ。。」

私の下手な嘘も晴には見破れなかったらしい。

晴は、私の返事を聞くと急に安堵の表情を浮かべ、先ほどからのぎこちない態度と妙な上目遣いをやめた。


「じゃあさ、社会教えてよ!!」

そうして話題を切り返し、私たちは普段の姉妹の姿に戻ったのだが、

内心私の心はずっと凍りっぱなしだった。


晴がまさか…覚えてるなんて思いもしなかった。

だとしたら、晴の脳みそにも私と同じような記憶の傷跡が残されているのだろうか。

そう考えるとかわいそうだった。


そして、なおのこと犯人が憎らしかった。

犯人が傷つけたのは、私だけじゃない。
晴のことも、傷つけた。

かわいい晴を、傷つけた。


許さない。


晴が部屋をでていったあと、歯がゆくて、悔しくて、また布団にもぐってひとしきり泣いた。


最後には、女に生まれてきたことを、恨んだ。
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