狂い咲きの蝶
「…やまかけうどん!!!!」

中間テストがようやく終わって、家にさっさと帰ってしまおうかと思ったら、勇樹が後ろからいきなり脅かしてきた。

「ありがとっ!!晴のやまかけは当たるな!!」

「別に…、先生が“ここでるぞ”って言ってたところだから…。」

「ふぅん、…。」


「………。」


みわたすと、教室には誰もいない。

珍しく黙る勇樹に一瞬どきっとした。




「ねぇ、キスってどんな味がすると思う?」


そして、次に勇樹の口から出てきた言葉がこれだった。

しかも、質問とは裏腹に、勇樹の顔はへらへらしている。


「し、しらないよ。」

「レモンあじとかよく聞くよね。」

「…知らないよ。」


顔を思わず背けた。

そして、ふたたび勇樹の方を見ると、唇をタコのようにつきだして、目をつぶっている。


ばかだ、こいつ。

そう思って、勇樹のやせた頬をつねって、怒った態度のふりをしてさっさと帰った。
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