狂い咲きの蝶
誘拐されたあの日。

わたしは4歳。杏音ちゃんは6歳だった。
友達の家から帰るときだったかな。

突然誰かにドタドタ囲まれて、そのまま二人とも強引にどこかへ連れて行かれた。


……暗い部屋。

私は泣きじゃくった。お母さんや理世ちゃん…だれでもいいから助けにきてほしかった。


「うるせぇ黙れガキが!!!!」

泣き続けていると怒鳴られて手を振り上げられた。

お母さんにも殴られたことがなかった私は、あのときの記憶がすごい鮮明に残ってる。

そんな男の人に杏音ちゃんは必死ですがりついた。


「やめて!!なんでもするから…晴はダメ!!」

「…あ?」

「晴は…だ…め………」


杏音ちゃんは泣いていなかった。まっすぐした目をしていた。
『死を覚悟する目』とは、あれのことだろうか。

そして次の瞬間、杏音ちゃんの悲鳴とともに、悲劇が幕をあけた。

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