狂い咲きの蝶
…あれが、何を示すのか今の私にはわかる。


杏音ちゃんはレイプされたんだ…。
それも何人にも…。

タバコの跡は、一生消えない。
でもそれより、杏音ちゃんの心の傷跡は……。


考えるだけで怖かった。

この前の保健の授業で
「レイプされた女性の五人に一人が自殺する」
といわれた。
杏音ちゃんもその五人に一人というのだろうか…。

…いやだ…絶対にいやだ……。


あのとき、私が泣き叫ばなければ、杏音ちゃんはヤキ入れられずにすんだのかな…

レイプされずにすんだのかな…

やっぱり……
私が悪いのかな…


「そんなことないよ」

誰かの声が聞こえる。
だけどそれはきっと私の心の甘えがささやく言葉。

今はそんな言葉…聞きたくない。


一通りの処置が終わって、点滴と輸血のくだがつながった杏音ちゃんの青白い顔は……

悲しいほど綺麗だった。
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