狂い咲きの蝶
「…ただいま……」
「おかえり、たのんだもの買ってきてくれた?」

「……ううん」
「じゃあお金返して。お母さんが買ってくるから…」

「…ない…」
「え?」

「おかね……ない…」

理世の震える声で母はすべてを悟った。
驚くような悲しい母の目を見ると今まで張り詰めていたものが一気にはちきれ、大声で泣いた。
母はひとしきり理世をなだめ、そして静かに部屋をあとにすると、どこかに行ってしまった。

“怒られずにすんだ”
このとき、安心しかしていなかった。すべてがおわったのだと思った。明日以降、もう絶対にお財布を持っていかなければ大丈夫だと確信した。


…そう、校則破った私がいけないんだよね…

理不尽だということもわかってはいたが、結局そういう風にけじめをつけるしかなかった。
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