狂い咲きの蝶
家に帰ると、急いで風呂場に入って服を着たまま全身を洗った。

ボディーソープで体が赤くほどこすっても、匂いがとれていない気がする…。一瞬にして自分が穢れてしまった気がした。

こんな目にあうぐらいだったら、グループなんかはいらなければよかったと思ったが、もう遅い。
一度入ると抜けられない。それがこのグループの掟のようなものだった。


あまりに長く続くシャワーの音が不審に思えたのか、兄がドアを叩いてきた。

「理世?どうした?理世??」
「うわぁあああああ!!!!」

シャワーの叩きつける音の中でも、理世の泣き声ははっきりと聞き取れた。曇りガラスの向こうから見ていた兄は、理世が服をきたままシャワーをあびているということがよくわかった。

「…理世…あけるよ…」
「お兄ちゃん……」

理世の体は兄が予想した以上に傷だらけだった。
足には痣。腕にはまだ真新しい傷跡がある。

「理世…なにがあったの?」
「……」
「いいからお父さんに相談しよう。な。」

兄の優しい言葉に頷くしかなかった。
相談して、それがもしアキコや大樹にバレたら…そう思うと怖かったが、このままでいることの方が怖かった。

だって、明日何をされるかわからない。

「よしよし。」

頭をそっとなでる兄の優しい手つきに、いつしかうとうと眠りについてしまった。
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