狂い咲きの蝶
「理世…。」

夜。杏音や晴、明が寝静まったあと、4人で家族会議が行われていた。

「…引っ越すか。転校したほうがいい。」
「でも…それじゃ杏音は…まだ1年生なのよ」
「…いや、このままだと理世が…」

理世が黙っている中で、話がどんどん進んでいく。
母は昔からそうであったように、杏音が一番かわいいらしかった。
それが悔しくて、何もいえなかった。

ただ、切られた髪の毛に気づかない者はいなかった。
だから理世がわざわざ事態の重大さを語る必要はなかった。

「理世は……どうしたい?」

不意に兄が聞いてきた。

「…引っ越したい……いなくなりたい…」

理世のか弱い声が家に重く響いた。
瞬間、母の顔が曇った気がした。

長い沈黙。

それを破ったのは居間のドアを開ける音だった。
…杏音だ…。

「おかーさん、」
「あら、どうしたの?」

「おひっこし、するの?」
「……」
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