狂い咲きの蝶
杏音は眠そうながらも大きな目をくりくりさせて質問を続けた。

「ねぇ、おひっこし、するの?学校、かわるの?杏音も?お友達は?」

杏音のとまらない質問に理世の頭の中に、とてつもない怒りの炎が燃え盛った。

――コイツ……

それは、杏音の質問に対して黙っている母親に向けての怒りではなく、杏音そのものに対しての怒りだった。

「杏音は寝てなさい。」

そんな理世の様子に気づいたのだろうか。父親は杏音をねかしつけるために杏音をつれてリビングを後にした。

ハァッという母親のため息のあと、確かに彼女はこうつぶやいた。

“やっぱり杏音がかわいそうよ…”
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