狂い咲きの蝶
そんな母の態度に絶望し、気づいたらまた涙がパタパタとこぼれてきた。

「母さんは、なんで杏音ばかりかわいがるの?」

見かねた兄がこうつぶやくと、母は一瞬固まって、叫びだした。

「私は一度だってそんなこと思ったことないわよ!!
…理世!!なんで泣くのよ!!しっかりしなさい!!」

「…母さん!!理世の髪の毛見てみろよ!!こんなになって…そんなことされる場所に娘をおいておく気かよ!!」

「和司は杏音がかわいくないの!?」

「うわぁああああん!!」

突然泣き声が聞こえた。…杏音だ。
父親が寝かしつけられなかったらしい。杏音はふたたびリビングに戻ってくると、まっさきに母親に抱きついてぐずぐず泣いた。

その様子にますます理世の怒りが燃えたことはいうまでもないことだった。


「もういい。とにかく私は明日から学校行かないからね。」
「理世……」

「じゃあね!おやすみ!!」

バタンと閉められたドアの音。大人が黙る中、杏音だけはそれからしばらくは泣いていた。
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