狂い咲きの蝶
「ただいまぁ」

「杏音!!大丈夫なの!?」

「大丈夫ー。元気。」


今日は午前授業だったこともあり、杏音はすぐに帰ってきた。しかし、顔を見ることができない。


「理世ちゃん、おばあちゃんちにはいつ行くの?」

「…明日…だけど…。」

振り返りもせずにつぶやいて、部屋にまた閉じこもった。
するとあわてたのか、杏音がついてきた。


「理世ちゃん、ごめんね、ごめんね…杏音のせいだよね…理世ちゃんがひとりでおばあちゃんちに…」

「…もういいから。」

「……。」

布団に突っ伏する理世。
何もできない杏音。

開放された窓からあたたかな風が吹き込んでいた。

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