悠久の絃

出逢い

〜絃side〜


まだ6月だというのに昼間は夏日を超える暑さが続いている。ここから夜景を見るのはあと何回だろうか。


おばあちゃん、決しておばあちゃんのせいじゃないから。誰のせいでもないから。
でも、一人でいるのは、苦しいんだよ。


丘の上にあるこの公園は、私の住む街を一望できる。公園といっても私以外に来ている人は見たことがないから、多分、この街の人達が忘れた私だけの場所。

時刻は午前1時過ぎ。コンビニのおにぎりとお茶だけが入った袋はやけに軽かった。



―どうせ死ぬなら、ここで死にたい。花と、星と、一緒に


私、早瀬絃(ハヤセ イト)は中学3年生。誕生日はまだ来てないから14歳。中学生、なんてただの身分紹介なだけで、実際には学校なんて行っていない。

昼は認知症を患ったおばあちゃんの介護。夜はおばあちゃんが寝た後に次の日の分の買い物と家事。
学校に行く暇なんてない。



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