悠久の絃
しかし、1番恐れていた質問が出た。


「家に、帰りたいです。いつ帰れますか?家におばあちゃんがいるんです。介護しなきゃいけないんです。いつ帰れますか?」


それは、本心なのか疑ってしまう質問だった。警察の調べによると、この子はヤングケアラーで、学校にも行けていない。それに、土砂降りの中で傘もささずにいたのだから本心だとは到底思えなかった。
しかし、聞かれたからには答えなくてはならない。


これから入院して病気を治療すること、おばあちゃんの行き先、退院後の生活を一緒に考えること、そして最後に、ずっと支えるという旨を伝えた。


案の定、現実を受け入れられなかった彼女は、強く、純粋な瞳を俺たちに突きつけた。


その直後、彼女は喘息発作を起こして意識を手放した。




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