悠久の絃
よし、と瀬堂先生と悠先生と向き合った。
椎名先生は後ろにいて、肩に手を置いてくれる。


瀬堂「もう気持ちの整理はできたかな?」

コクッ


瀬堂「じゃあ、どうして朝、走っちゃったか教えてくれる?」


「どうして、なのか、自分でもよく分からないんです。
気づいたら無我夢中で走ってて、そしたら、苦しくて、エレベーターの前で倒れてました。」




だんだんと自分の声が小さくなるのがわかる。
これじゃ、怒られるだけだ。
でも、怒られるようなことをしたんだから、私が悪いけど。





しばらくの沈黙の後、ふう、と一息ついてから瀬堂先生が話し始めた。


瀬堂「わかった。正直に言ってくれてありがとう。
僕たちが走っちゃダメって言ってる理由はもうわかってるね?」


「はい。」


瀬堂「うん。次は無いからね?」


「はい、、」


目が笑っていない笑顔がほんとに怖い。
瀬堂先生は絶対怒らせないようにしよう。



瀬堂「赤城先生も言いたいことあるんでしょ?言わなきゃ伝わらないよ。」


赤城「はい。」


うぅ、、これは悠先生にも怒られるやつだ。




赤城「いとちゃん。下向かないで、僕の顔見てほしいな。」


その言葉に従い、ゆっくりと顔を上げた。

悠先生の綺麗な腕がスっと私の頬を撫でた。

一瞬、また叩かれると思い目をつぶって体を後ろに引いてしまったが、椎名先生がゆっくり背中をさすってくれた。



赤城「朝、本当にごめんね。傷つけるつもりはなかった。僕は、もっといとちゃんにいとちゃん自身を大切にして欲しい。

初めて会った時も、いとちゃんは土砂降りの中で倒れていたんだよ。

ここにいる人はみんな、いとちゃんを助けたいと思ってる人達なんだ。だから、逃げないで、向き合ってほしい。わかってもらえるかな?」





、、、、、コクッ


「、、、せんせ、、」


赤城「ん?なに?」


「、、私の、ために、、怒ってくれたんだよね。
ありがとう。」


赤城「僕の方こそ、わかってくれてありがとう。でも、叩いちゃったのは本当にごめんね。」


「だいじょぶ。もう痛くないから。」





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