悠久の絃
気づけば時計の針は12時10分を指していた。

パソコンの電源を切り、朝に買ったおにぎりをお茶で流し込んで最後にエネルギー補給のゼリーを飲んだ。
とても医者がやるべきではない食事だが、今日ばかりはしょうがない。


気合を入れて、いとちゃんの病室へ向かった。
コンコンコンっとノックをしてドアを開ける。


「あ、起きてたの?」


寝てると思ってたから起きてたのはびっくり。
でも、近づいて行くといとちゃんは顔を隠してしまった。


「お顔出さないと苦しくなっちゃうから出ておいで」


と声をかけるとゆっくり出てきてくれた。だけど、目が真っ赤。多分泣いてたな。やっぱり今日辛かったよね。

ちょっとまってね、と声をかけてナースステーションに保冷剤を貰いに行った。ちょうど夏がいたので一緒に着いてきてもらう。







「入るよ〜」


と言って、中に入っていくと、いとちゃんはまた布団に潜ってしまった。


「さっきも言ったでしょー。出ておいで。お目目赤いから冷やそうよ。」


渋々出てきてくれたので保冷剤を目に当ててあげた。


「夏、ちょっと早いけどお昼ご飯持ってきて。」


と夏に声をかけて、いとちゃんと少し話す。


「今日のやつ苦しかった?」


絃「うん。苦しかったし、やだった。」


声が震えている。よほど辛かったんだろう。


「そうだよね。苦しかったよね。嫌だったよね。でもね、やらないと治らないんだ。」


絃「もうやだ。やらない。家に帰る。」


「嫌でも、家には帰れないんだ。とりあえずさ、夏が今ご飯持ってきてくれるからそれ食べよ。ご飯食べたら病院の中お散歩しよ。」


納得はしてくれてないだろうけど、頷いてくれた。


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