悠久の絃
??「うん、落ち着いたね。僕の名前は赤城悠(アカギ ユウ)って言います。悠先生って呼んでね。そっちの方が呼びやすいから。僕は研修医だから指示はあまり出せないんだけどね。これからよろしくね!」


なんか自己紹介始まったし。



「…早瀬、絃、、です。ここどこですか?」


「ああ、そうだよね。ここは病院だよ。女の子が丘の上で倒れてるって深夜に通報があったんだ。それも大雨の中でね。いとちゃんは3日くらい寝てたんだ。それとね、……」



は?3日?3日も寝てた?早く家に帰らないと。
3日間もおばあちゃんはどうしてたんだ?早く帰らないと。


勢いよく体を起こして急いでベッドから出た。一瞬腕に痛みが走ったが、そんなこと気にする暇は無い。

悠先生の戸惑っている声が聞こえるけど、足を止める理由にはならない。


何とか足を引きずってドアの前に来た時、タイミングよくドアが開いた。そこに立っていたのは、背が高い人と、ものすごくガタイのいい人だった。

2人の間を通ろうとしたけど、背が高い人に阻まれた。さらにはさっき痛みが走った方の腕をガタイのいい人に掴まれて、完全に動けなくなってしまった。


「やめて!!離して!!わたしは家に帰るの!!!!!」


抵抗しても無駄だと言うのはわかってる。それでも体が勝手に動いている。

動いていると言っても、腕は掴まれているし、足元もおぼつかない。2人は黙って私を見下ろしている。次第に呼吸が苦しくなって、その場にしゃがみこんでしまった。


??「赤城先生、点滴と酸素マスク用意。吸入もしたいから、用意して。上宮先輩、その子抑えててください。」


背の高い人が指示を出す。ガタイのいい人は上宮って言うのか。

苦しいけど、何故だか客観的に見てしまう。

自分の体に色んなものがつけられていく。痛いし、苦しいし、こんなの生き地獄だよ。










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