悠久の絃
瀬堂「昼間は暑くても朝晩はまだ冷えるからね。
何考えてたの?」


「夢で、お父さんとお母さんが出たんです。

お父さんがお休みの日に、お母さんは料理を作って、お父さんは大人の人達をたくさん連れてきてお酒を飲みながら楽しそうに話してたんです。

その大人の中で、2、3人ずっと私と遊んでくれて、お話してくれたお兄ちゃん達がいるんです。

お父さんとお母さんにはもう会えないけど、そのお兄ちゃん達には会えるのかなって考えてました。」


瀬堂「そうなんだね。…僕は会えると思うよ。どこでどんな風にとまでは言えないけど、絶対に会えると思う。」


「たしかに、誰かに似てるんです。ここに来てから急にこの記憶が出てきて、よく夢に出るんです。」


瀬堂「じゃあ、この病院の人なのかもしれないね。今度、思い出せるヒントになるかもしれない場所に連れて行ってあげる。」


「ほんとですか?!ケホッケホッ」


瀬堂「うん。ほんと。
ちょっと咳出てきちゃったね。一旦部屋に戻ろうか。」


僕につかまって、と言って瀬堂先生は私を抱き上げた。
抱っこされるなんて久しぶりすぎて、嬉しくて、ぎゅっと白衣の襟を掴んだ。











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