悠久の絃
気づけばかなり読み進めていた。

時計を見るともう10時7分。

トイレに行きたかったからもう一度廊下に出た。朝、散歩をしていた時にトイレを見つけていたから場所はわかる。
トイレに入って用を済ませ、手を洗った。
まだ部屋に戻りたくない。

そう思って朝歩いたところと逆方向の廊下を歩いた。










呼吸器内科は白で統一されていたけど、小児科はカラフルだから歩いているだけで楽しい。

悠先生、いるかな。

そう思って悠先生を探しながら歩くことにした。夏くんと同じ服を着ている人もいれば、悠先生みたいに白衣を着ている人もいる。しばらく歩いていて、ふと足が止まったのはプレイルームの前。


プレイルームでは小さい子が数人遊んでいる。でも、目に止まったのはそれじゃない。プレイルームにはピアノや、本や、テレビがある。

それらに釘付けになっていると肩に手を置かれた。

振り向くと、瑛杜先生がいた。



瑛杜「中、入ってみたいん?」


瑛杜先生は優しく、微笑みながら聞いてくれた。
でも、入りたいんじゃない。眺めているだけで十分。
私は首を横に振った。


瑛杜「ほな、何しに来たん?」


「悠先生、どこにいるかなって思って。」


瑛杜「悠は今おらんよ。昼には戻ってくると思うで。」


「そうなんだ。じゃあ私も部屋に戻る。」


瑛杜「一緒に行くで。」


瑛杜先生に部屋まで送ってもらって、私はもう一度本を読み進めた。










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