悠久の絃
30分くらいたっただろうか。呼吸が落ち着いてきて、だんだん冷静になった。


??「落ち着いた?とりあえず名前を教えるね。俺は夜星樹(ヨボシ イツキ)。君の主治医を赤城先生と担当する。君の今の病状の説明をするね。」

夜星先生か。この先生がさっき痛いことを指示した張本人だ。




「まず、君はなぜここに来たか赤城先生に聞いたよね?どうしてあんなところにいたの?」


そんなの、なんでもいいでしょ。何も知らない人達に言う義務なんて無いでしょ。


でも、ずっと黙って俯いていると、


「話したくないのか、話せないのか、どっち?まあ、どちらにせよ話してもらうんだけども。」


そんなこと言われても、私が言うわけないから。あの時、なんで助けたりしたの。少なくとも、ここにいる人達はお父さんが死んでからの八年間、私がどれだけ辛かったか分からないでしょ。



次第に助けられたことへの怒りが湧いてきた。


「…どう、、して…どうして私を助けたの。」


上宮「どうしてだって?それは俺たちが医者だからだよ。あ、ごめん。自己紹介をしてないね。俺は上宮一己(カミヤ イブキ)。救急の医者だ。
そう、俺たちは医者なんだよ。医者が苦しんでる患者を見捨てるわけないだろ。それに、どうして深夜に、しかも大雨だったのに傘もささずにあんなところにいたんだ。俺たちはそれが聞きたいんだ。」


だから、そうじゃない。私だってあなた達から聞きたいのはそういうことじゃない。


でも、何らかの意思表示をしないとこの場は終わらない。その雰囲気を、三人の先生が作っていた。


黙って、俯いて、横に首を振った。



夜星「そうか。わかった。今でなくてもいいだろう。ただ、いつかは絶対話してもらうからね?」


いつかならいい。私の気が向いたら話せばいい。

小さく縦に首を振った。


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