悠久の絃
21時。嵐は過ぎ去った。

次から次へと患者さんが運ばれてきて、30分前にようやく消防から救助活動が終わったと報告が来た。

僕は軽傷者担当だったけど、それでも大規模な事故だったのがわかる。



上宮「お疲れ様。」


振り向くと上宮先生が缶コーヒーを差し出していた。
上宮先生は昨晩当直だったからオンコールできたのだろう。


「お疲れ様です。長かったですね。」


上宮「ああ。久しぶりに疲れたよ。」


「上宮先生はオペの方ですよね。」


上宮「そう。専門医が来るまでに開腹したりして。おかげで6回も着替えたよ。」


「6回。ほんとお疲れ様です。
もう21時か。鶴川先生の病状説明終わっちゃいましたよね。」


上宮「終わっただろうな。明日から治療だよな。」


「はい。いとちゃん、受け止められたかな。」


上宮「受け止めてないだろうな。あの子は賢いから、受け止めて理解したら間違いなく治療拒否する。鶴川もそう考えてるはず。」


「ですよね。
僕、怖いんです。」


上宮「そうだな。俺も怖い。」



上宮先生も、怖い?僕は上宮先生の顔を見た。


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